医の風景

2021/08/23

コロナの厄介な後遺症 ・・・ 息切れ・呼吸苦

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 コロナ感染から回復後も後遺症に悩まされる人々の存在が報道されているが、たしかにここのところ、自宅療養が解除になった患者さんの受診が続いている。

 発熱外来でPCR陽性となり、軽症と判断され、発症から2週間ほどで自宅療養は不要と保健所から伝えられても(今のところ検査結果の集約、療養体制の判断・指示は保健所主体)、咳や息切れが続いたり、新たに出現したり(息切れや呼吸苦がひどくなったり)で、(コロナの受け入れができない)我々中規模病院の呼吸器外来受診となる。

 この間、PCR検査以外にはレントゲンなど画像診断はなされていないケースがほとんどだから、患者さんは自分のからだにどのようなことが起こっているのか判断がつかず、不安だ。
 オンライン診療で治療薬の処方が行われても、テレビ電話程度では限界がある(むろん、その対応だけで済む場合も少なからずあるのだろうけど)。

 発症から3週間程度経っているとはいえ、コロナ感染の確定診断はついているから、やはり診察では少々緊張する。
(疑い例対応が多かった時期は完全武装の検査着だったが、現在は発熱外来として完全に一般の動線と切り離されており、診察室では通常のマスクとフェースシールドのみ)

 問診→聴診→検査が通常診療の原則ではあるが、去年からの経験を踏まえ、問診→CT→聴診の順。
 CT画像で肺炎の趨勢がほぼ見当がつく。まだピークを越えていなのか、納まりつつあるのか、すでに治癒に至っているのか ――。
(これはぼくの臨床能力に帰結するものではもちろん、ない。この1年間に専門医の間でやり取りされた多くの情報交換の賜物である)。

 自覚症状としての息切れ・息苦しさと、CT画像上の乖離の多いことがほとんどだ。
 つまり、咳とか息切れ・息苦しさの程度(じっとしていても苦しいのか、歩いたり階段を上り下りすると苦しいのか、仰向けになって寝ると苦しくなるのか ・・・)と、CT画像から推定される呼吸機能の温存程度(テレビなどでよく表現されるのは「肺が真っ白になってる」。肺胞部分はCT上黒が主体)。
 さらにパルスオキシメーターで酸素飽和度を測定しても(歩行後に呼吸苦症状が出ても)、全く低下しない。

 気のせいばかりではない、現状で実施可能な検査では簡単に測れないファクターがあるようだ。

 治癒過程にあると、損傷を受けた肺は広がりにくくなっているという事情も関与しているか。これはCT所見で推測可能。
 (皮膚のケガが治る過程で、かさぶたができるとそこの皮膚は引っ張ても伸びないのと同じようなものといっていいかもしれない)。
 あるいは闘病中の臥床が長くなり、筋力(特に下肢の)が落ちて、労作に困難感を生じている場合もある。
 重要なことは発症から治療ないし経過観察期間を過ぎて、我々のような一般の呼吸器外来を受診できる患者さんは、現状からさらに進行することは(おそらく)ないだろうということだ。
 
 予後は決して悪くはない(長引くにしても)と話し、CT画像を提示しながら、「この線状につながった濃い部分は怪我に喩えればかなり治癒したかさぶた、そのまわりのやや灰色っぽいところは、まだかさぶたにならず、傷口がグジュグジュと炎症がくすぶっている状態で ・・・・・・・・ 」といった具合に説明するとほぼ納得していただける(と思っているのはぼくだけかもしれないけれど)。

 最近は当たり前のように世に喧伝されているパルスオキシメーターに関しても看過しがたいものがある。
 そもそもこの検査が最も正確なのは新生児・乳児であって、成人の場合はあくまで病態変化の判断の目安と考えなければならない。
 だから酸素飽和度が93%を切ったら危険というのもキケンな判断で、もともとの値からの変化の程度・速さを考慮しなければならない。
 98%であった人が短時間に95%になったとしたら急速に悪化している可能性があるかもしれない。

 こういった「常識」を「専門家」たちが声を大にして言えないのは、入院病床の逼迫が背景にあるからなのかもしれない(ホントにそうだろうか?)。

 今は我々一般病院ではコロナ受け容れができず、積極的治療に貢献できないけれど(病院により「諸事情」があるので)、軽症に投与できる治療薬(すでにいくつかある)が早急に認可され、供給されたら、局面は大いに良化するのは明らかだと思う。

 感染者が増えているわりに重症者は少ないという統計はあるにしても、患者さんたちpatientsは苦しさに堪え、戦っている。
 この老生、お手伝いできそうな(と自分では思ってる)場面まだ続きそうだが、言うまでもなく、これは決していいことではない。

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2021/06/14

不整脈と 梅雨入りと

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 きのうは久々に期外収縮が1時間ほど出没を繰り返した。心室性期外収縮の2段脈で、正常心拍と余計な心拍が交互に出現する。
 波形で〇と★が交互に現れ、3段目で正常に戻っている。規則正しくキレイに出ていると言えば言えるが、気分は実に不快である。

 〇で示す心室収縮によって血液が全身に送り出され、これが脈として認識されるわけだが、〇と〇の間に入る余計な収縮★は心臓から血液を拍出せず内部に滞留させる。血液は次の〇の心室収縮でいっしょくたに心臓から送りだされるので、そのボリューム(1回拍出量)は〇だけが連続する場合より何割か多くなる。これがウッとくる動悸の自覚。

 山荘の古くなった外壁の補修の間中、この余計な収縮活動が出没を繰り返した。やはり「ココロは心臓に鎮座する」とあらためて思った次第である。
 
 きのうの今日、2階の階段を昇ったところで2、3発を自覚し、一瞬の気鬱。
 (AppleWatchで即座に不整脈の正体を確認できるのはありがたい、とはいえ)

 空梅雨だ、などと言っていたらきょうが梅雨入りらしい。

      脈が飛び意気消沈し梅雨に入る

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2021/05/17

2回目のワクチン接種

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 先週金曜日に2回目のワクチン接種を受けた。
 連日メディアのどこかで副反応の記事が出ている。接種数日後に死亡したとか、これまでに30数名が亡くなったとか、これだけを見るとひどく不安になる。内容はほとんどがワクチンとの因果関係は不明と、極めて不親切というか無責任である。
 とは言えやはり、射つ前は不安になる。

 当日。今回も午後の外来終了後(というより終了前から催促あり。予約者はすべてこの時間までに接種終了、ぼくが最後だった)。
 経過は以下の通り。

・注射;前回は非常に呆気なかったが今回は少し痛かった(インフルエンザに比べれば弱い)。
・当日夜;前回は就床間近になってちょっと注射部位が痛みだしたのでアセトアミノフェンを服用したが、今回はあまり痛みが強くなる予感がなかったので、鎮痛剤は服用せず就眠。明け方近くに尿意とともに発汗あり、痛みもやや増強していたのでカロナール500mgを服用。熱発していたかもしれない。
・翌日;痛みは減弱(再度の鎮痛剤服用は不要)、発熱もなし。軽い頭痛が少々。
・翌々日;痛みはほぼ消失、眠気あり(前回同様)、頭痛消失。

 勤務する4つの医療機関では少しずつ接種が進んでいる(まだ遅々としてはいるが)。
 受けた人たちの感想を聞くと人様々だ。
 注射部位の痛みは多くが「腕が上がらないくらい」という。消失まで3、4日ほどか。発熱は翌日(朝からの人も、24時間後に突然の人も)でほぼ収まる。倦怠感の頻度が結構髙く、2、3日続くことが多いようだ。
 ぼくの場合、何とはなしの眠気、疲労感、頭痛が2、3日。1回目と2回目であまり差はない。
 接種の2回を比べてみると、2回目が強く出ることが多いとされているが、そうでもないようで、1回目の方が辛かったという声も聞く。
 ほぼ全員がどこかのタイミングで解熱鎮痛剤を服用。

 飲酒については控えるように言われているが、ぼくはほぼいつも通りに飲んだ。2回とも週末金曜日ということもあったし。
 で、翌日の頭痛だとか倦怠感というのも二日酔いとの区別はつきにくい。まあ、医療従事者として褒められることではない。

 全体としては接種後3日くらいでほぼ回復しているが、若い人たちの方が強く出るという傾向は言われている通りのようだ。重大なケースは出ていない(大学病院では数千人規模中、数名が入院したという話が伝わるが詳細は不明)。

 以上は自分を含め、まわりの数10人についての結果であるが、接種しないリスクと比べれば接種した方がはるかにいい、怖がることはない、という感触だ。
  (あくまで個人の感想です)

 我が国の接種状況は全くお寒いが、アメリカやイギリスの例を見ると、ふた月後にはかなり進むのではないかという気がしないでもない(淡い期待か)。
 外来でも患者さんの多くが現状に悲憤慷慨される。
 もう少しの辛抱、とにかく今は若い人たちに近づかないよう気を附けましょう、と話す。

 

2021/04/29

見えない敵、見える敵 : アップルウォッチで不整脈ウォッチ

 見えない敵、ウイルスが猛威をふるい続けている。見えないから厄介なのだ。これが見える化できたらどんなにかいいものか・・・

 時おり出現する不整脈にぼくは気鬱になる。
 心電図上で確認したときの自覚症状と頚動脈の拍動蝕知で、どんなタイプの不整脈が起こっているのかほぼ判断(推測)できるようにはなった。しかし、指を頸動脈にあててその状態から、頭の中の記憶で心電図を想像するわけで、ホントに正しい確認かどうか、判断はできない。

 オムロンの簡易心電計は悪くないが、常に持ち運ぶわけにはいかない。

 今までのいわゆるスマートウオッチでは心電図の測定はできるのもあったけれど、リアルタイムではない。
 自覚症状が現れたときに画面にタッチし、それをスマホのアプリ上で確認するので、判断するまで時間がかかる。

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 最近医療機器としての承認を受けて、アップルウォッチでリアルタイムでの目視が可能になった。
 脳梗塞に深く関連する心房細動の早期診断が主たる目的で開発されたものだが、ぼくを悩ませる期外収縮の判定も可能だ。
 つねに装着しておき、自覚症状があったときにそれが何者なのか、即座にこの目で確かめられる。
 ぼくが待っていたものだ。さっそく通販で購入。

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 走りながらおかしな動悸を感じたとき、すぐその場で確認できるから、走り続けていいものかどうか、大いに役に立つ。
 さらにいいのは、iPhoneと連動するので、すでにインストール済みのランニングアプリがこのウオッチでのスタートと同時に自動的に始動し、あとで走行ルートや1キロごとのスプリットタイムが分かる。

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 走り終わって何かおかしいぞと思って測ったら2発の心室性期外収縮(感じてから測定したからこの間のタイムラグを考慮すれば2発以上だ)。
 計測中の30秒間で消失したので納得、安心。

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 帰宅途中に違和感あり、測ったら計測時間目一杯の心室性期外収縮の2段脈。追加測定の30秒間は異常なし。
 30秒とちょっとの持続だったわけでひと安心(とは言え、気分は良くない)。

 しかしまあ、とにかく、測定前から2段脈だろうと思っていたので、それがイメージ通りに(大脳の記憶を手繰り寄せることなく)即座に直接視覚で確認できるのは、悪くない。
 ぼくにとって最悪のパターンはこの不整脈発作が持続して致死的なものに移行すること。これまで確認したこの発作は教科書的には、処置不要のものではある。

 外来患者さんの中に、動悸を訴える人がときたまいるが、これまでは脈の自己測定というのを勧めてきた。
 頚動脈に指をあててその拍動を感じ取ってもらい、同時に患者さんの手首の脈をぼくが取って、そのリズムを教える。・・・トントントントン・・・わかりますか? ・・・はい、わかります・・・この自己測定を練習しておいて、動悸が起きたら1分間の脈拍数(15秒測りそれを4倍する)と規則性(トントントンがトトトン、トトーンとか規則性を欠いていないか)を確かめる。
 それでもって大体の判断がつくし、24時間心電図検査の必要性の有無を検討できる。
 今後は、患者さんによっては、スマートウオッチの使用を勧めたいと思う。

 見える化は有用。見えないウイルスは厄介だ。きょう東京の新規感染者数は1000を超えた。当分巣篭りだな。

          巣篭りを慰めむとや春の雨

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2021/02/09

ウイルスたちの言い分

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 仕事帰りの午後、荒川べりを走った。晴れてはいたが、風がむやみに冷たい。
 ランナーはこんな日の昼下がり、いるわけないな、と思っていたらはたして目撃したのは3人のみ。あとは厚着でウオーキングする人たちがボチボチ。
 時おり風が強くからだに噴きつけて来る。これじゃあ、マスクなしですれ違ったところでウイルスは空中に漂ってなんぞいられないなあ、とまたぞろコロナが脳裡をよぎるが、よぎったのは今日コンサルトを受けた入院中の患者さんのCT画像。

 PCRは2回陰性だった、当初の強い呼吸困難感はほぼ消失したものの、肺炎の影が結構残っている、どうしたらいいだろうか、と。
 あとは外来フォローアップでよいでしょうと、来週ぼくの外来を受診して頂くことになった。
 担当医が2回PCRを行ったのも道理、というその画像。やはりCOVID-19肺炎の治りかけの所見に思えた。要するに偽陰性。最近、PCR陰性のこの手の画像をよく目にする。

 緊急事態宣言から感染者数は減ってはいるが、まだまだ今後のことは分からないし、ゼロにならない限り宣言解除となったらたちまち再増加するのではないかと危惧する。
 ここのところウイルスが変異し、イギリス由来とか南アフリカ由来とか言われているが、完全な鎖国状態であっても同様の変異が日本でも起きていたのではないか、つまり、このウイルスは、ある一定の条件下では同様の変異を来す性格をもともと内蔵していたのではないか、と思っている。

 一寸の虫にも、ではないけれどウイルスたちにだって言いたいことはあるのではないか。
 たしかにウイルスといえば人体に悪さするものというのが間違いなく通常の認識、ウイルス活動が社会で顕在化する場合、まず100%、厄災をもたらすからこれは当然の理。
 ざっと思いつくまま列挙すると、インフルエンザ、麻疹・風疹、日本脳炎、肝炎、ノロ、ムンプス、狂犬病、エボラ、HIV、それにSARS、MERS ・・・・・・・・ お馴染みのもあれば恐ろしいのもある。

 でもそれはごく一部らしい、いい奴もたくさんいるらしい、なんて医療職にあるぼくが発言したら顰蹙ものかもしれないが、実際そうらしいと思うのは、過日の日経新聞の記事。
 ・・・・・・・・ 胎盤の進化的形成にウイルスが貢献してきた事実が解明されている。赤ちゃんが体内に誕生したときに母親の免疫が「異物」を排除しないシステム構築にウイルスが一役(かもっとか)買っているという。こうして哺乳類は子孫を作り出せるようになった。脳機能の進化にも関わっているらしい ・・・・・・・・ とこんな内容だったと思う。

 コレステロールには善玉と悪玉がある、腸内細菌にも善玉がいる、とこれはもう現在では人口に膾炙されるところ。ならばウイルスにも善玉があるというのも  ・・・・・・・(続く)

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 さて、本日は浮間公園から荒川べりを新荒川大橋まで走り(下り)、橋をわたると向う岸を戸田橋まで行き(上り)、戸田橋から浮間へ戻る10キロ余りのコース。
 行きは背中から陽射しとともに追い風を受けて快適に走ったのだが、新荒川大橋の上は北からの強烈な向かい風。
 橋の下の方から何やら鳥たちが絶叫するような声がする、と思っていたら橋脚に激突する風の音だった。
 西の彼方に丹沢山系が望まれる。
 橋を渡ると向こう岸はゆるやかな上りで、おまけに前方(西)、あるいは側方(北)から冷たい風の吹きさらし。
 マスク兼用のネックウォーマー(複数の人たちとすれ違う場面以外はマスクとしては使わない)で顔の下半分~首を覆ったり下げたり、ジャージーのジッパーを開いたり閉じたり、風に合わせて調節、凌ぎの連続だった。
 それでも上がれば気分は悪くない。
 次回は、行きは上り、帰りは下りにするかな。

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2021/01/19

コロナ後遺症 & 医療総力戦

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 今日は終日川向う、お隣県の病院の外来。
 地域の基幹病院で多数のクラスター(500床のベッド数に300人余りの感染者!)が発生しており、他山の石にあらず、緊張感がそこはかとなく漂っているかというと、そうでもない。
 患者さんたちが溢れてこちらへ回ってくるどころか、感染を恐れての巣篭りで減っている。電話で再診というのもある。
 受診控えで持病の悪化がずっと懸念されてきたが、この地区でもこれからどうなるのやら。

 今年初めに紹介されて来たコロナ後遺症の呼吸不全の患者さんが、再診にみえた。
 労作で呼吸苦が出るのは変わらない、酸素なしでないと息苦しいと。
 さらに深刻なのはコロナ禍で仕事を中断せざるを得ない状況で、在宅酸素療法が導入されたため、医療費負担が苦しい、身体障害者の認定は受けられないものだろうかと。慢性呼吸不全が認定されるとその障害程度によって医療費の減免措置がある。
 1か月経ち、CTスキャン検査を受けてもらうと、かなり陰影が消退傾向にある。指先の酸素飽和度も酸素なしでもほぼ正常。これでは障害者認定は無理そう。
 で、正確なデータを取ろうと動脈血を採取して直接酸素濃度を測ることにした。

 動脈からの採血なんて何十年ぶりだろう、なんて不安を表情に浮かべてはならない。
 通常の静脈からの採血とは違って(腕をゴムバンドで駆血したりせず)、指で拍動が触れる動脈に垂直に注射針を突きさすと、血圧に押されて血液が自然に注射器の中に入り込んでくる。
 そういえば年末、オフィスビルのクリニックで検診が混雑してインフルエンザ予防接種を行う看護師さんの手が回らなくなったとき、予防注射をさせられたっけ。こちらも何十年ぶりかの手技だったが、特段、その後、受診者からのクレームはなかったというのでほっとしている。

 話を戻す。動脈血の採血は無事終了。酸素濃度は正常範囲に保たれている。
 要するに呼吸苦の原因は下肢筋力低下によるものなのだ。
 やはり初診のとき、ぼくの抱いた「希望がないわけではない」という印象は「希望バイアス」ではなかったようだ。
 何週間もほぼ寝たきりで筋力が低下、このため自重を移動させるために(結構肥満体型のお方である)困難を来していると考えられる。心不全による呼吸困難は他の検査所見から否定的。
 通院で呼吸リハビリを継続してもらうことにした。
 大丈夫、希望が持てます、酸素もいずれ不要となるかもしれませんね、と説明すると、暗い顔つきだったのが明るくぱっと輝いた(ように見えたのは自己満足というものか)。

 しかし、注射にしても動脈血採血にしても、まだやろうと思えばできるものだ。窮すれば通ずか(でも気をつけろ、変な自信を持つなよ。自分で思うのと他人が傍から見てる評価はしばしば、というより大抵異なるからな)。
 日本中で医療が逼迫している。最前線で頑張る人たちの後方支援として、我々老兵にもできることがあるのかもしれない。
 リタイアした看護師さんたちにもあちこちでお声がかかっている。医療総力戦だ。
 開業医の方々も、自宅待機中の感染者の人たちを積極的に往診して回ったらいいと思うがどうだろう。

 今日は風が吹いて無闇に寒かった。
 風に向かって走ると苦しい。不整脈が起きているのでは、と時々頸動脈に指を当ててみたが、別段異常はない。
 寒さの中を走るのはやはりきつい、ただそれだけのことではあった(でも、よくやるよなぁ)。
 走り終えても達成感はなかった。
 今日こそご褒美だ。週末ではないが、熱燗を(ちょっと)一杯(プラスアルファ)。
 
          さらに一枚厚着で走る月の下

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2021/01/15

1年間のツケ

 午前中、オフィスビルのクリニックでの診療中に保健所から電話あり、昨日受診された発熱患者さんの検査についての件。
 要点は3つ。
 ① PCR結果が陽性、症状から取り敢えず自宅待機、②保健所から連絡するが業務が逼迫し、少し時間がかかる、③家族が濃厚接触者なので検査を受けるように勧めてください、と。
 濃厚接触者は保険診療になる。当クリニックではコロナ対応での保険診療による濃厚接触者検査は行っていない。
 家族はどこを受診したらいいのか、それを教えて欲しいと尋ねるとしばらくお待ちを、と。折り返し、すぐに近隣の施設を教えてくれる。コロナ対応の施設が公表されていないので手間がかかる。

 ご本人に電話連絡し、上記を伝える。様子を訊くと、この1週間全く熱が下がらない、咳が出るという。
 で、咳が悪化したり、呼吸困難感が出るようなら(今のところそれはないと)、保健所に受診施設についての指示を仰いでくださいとコメントするが、話終わるまでに、すでに懸念が駆け巡る。
 先に保健所で教えてくれた施設は単に濃厚接触者の検査を行うのみで、治療は行っていない。
 受診が必要になるとすればおそらく入院の可能性が高い。
 そこへたどり着くまでに、まず、保健所に電話が繋がらない(過日ご近所の息子さんの例あり)、繋がっても保健所でも受け入れ先の確認に手間取る、そうでなくとも業務は逼迫・・・・・・
 電話を切ったあとも何となく後ろめたい気になる。
 先のぼくのバイト先の病院もコロナ陽性の救急対応は現在できる状態ではない(目下調整中、公的病院ではないがとにかく要請が急なのだ)。

 今日がコロナ上陸1年目。
 昨年春先から今冬の事態の重大さは言われていたのに、行政が怠慢だった。「準備期間」はあったのに。
 中国トップを国賓で迎えるとか、オリンピック開催云々とかで、外国人の入国制限が遅れたのが手始めと考えると、現状は単に厄介な疫病ではあるにせよ、人災と思えてしまう。
 しかし、かく言うぼくにしたって春頃は、インフルエンザ並みかも、などと高を括っていたし、それに「専門家」の皆さんのいうこともいろいろと変わったし、と言い訳がましく今、これを議論してる場合ではない。
 とにかくここまで来たら非常事態宣言の対象範囲を前回同様、全国規模に拡大しないと収まらないのではないか。感染拡大予防と経済両立は有り得ない。時限立法で特措法に強制力を持たせる必要もあると思う(権力者に濫用の危険性はあるが、あくまで時限で)。

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2021/01/14

若き日の歌 ・・・ そして今は

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 一昨日の続編。整理中にもう一つ「古文書」の発見があった。
 1970年、入学したが、1年目は原則全寮制で、他学部の学生ともども4人から8人が一緒に起居。二部屋が与えられ片方は勉強部屋、もう一方は寝室。今では考えられない環境だ。
 男子ばかりで、いわゆる古き良き時代の雰囲気が幽かに残っていた。
 その寮制が何十周年かを迎えるにあたって(だと思う)、寮歌を作ろうということになった。
 文集同様、だれが言い出したのか、寮生か大学当局か、こちらも詳細の記憶は全くない。

 懸賞金が出るという。作詞、作曲にそれぞれ5000円。で、ぼくも応募した。
 10数作が集まり、学生による選考委員会らしきものがあり、そこでぼくのが選ばれた。
 1万円を手にしたわけだが、むろん仲間との飲み代となって忽ち消えた。
 以下、恥を忍んで詞を記す。題は「行雲に感ず」
 
   行雲に感ず 茫々たり前途
   落日に思う 縹渺たる我が想い
   君に勧む 更に尽せ一考
   学びて習う 楽しからずや
   いつまた聞かん 我らがこの日の息吹きを
   いつまた聞かん

   草木に感ず 飄々たり光陰
   玉露に思う 寂々たる人の日々
   君に勧む 更に尽せ一杯
   学窓去れば波濤は高し
   いつまた踏まん 我らがこの日の轍を
   いつまた踏まん

 見ての通り、旧制高校なるものがあったころの寮歌(「ああ玉杯に花うけて」とか「紅萠ゆる」などなど)のイメージを意識した内容である。
 メロディはAm(イ短調)の暗いイメージですな。出典が一応ありまして、

「行雲に感ず」・・・中国古典から(あるいは禅語として)行雲流水の行雲
「君に勧む 更に尽せ・・・」・・・王維が友に贈った惜別の歌
       渭城の朝雨 軽塵を浥す
       客舎青青 柳色新たなり
       君に勧む更に尽くせ 一杯の酒
       西のかた陽関を出ずれば 故人無からん
「学びて習う」・・・論語:学びて時に之を習う。亦説ばしからずや。朋有り、遠方より来る。亦楽しからずや。

 とは言え、なんともはや、気取ったもんだ。今目にすると汗顔の至り。
 それに、「落日に思う 縹渺たる我が想い」・・・この「思う」「想い」重なりを何とか回避すべきだったな。

 しかし、まあ、こういう弊衣破帽に親しむ雰囲気が当時はあったわけだ、満場一致で選ばれたということは。
 どうせすぐ忘れられ、歌われなくだろうと思っていたら、卒業を前にしてサッカー部(一応6年間所属、ほぼ控えでした)の納会があったおり、下級生たちが歌ってくれて、おお、まだ生きておったか、と感動したものだった。
 今では女子学生も増えて、女子寮なるものもできたと聞く。こんなアナクロな寮歌なんぞは消滅しているに違いない。

「学窓去れば波濤は高し」・・・どうせ卒業したら世間は厳しいぞ、なんてことを1年生の分際で悟ったような顔で詠った。

 むろん、誰にしろ、これまでいろいろあったに違いない。ぼくなんざ、周囲に波風ばかり立てて来た。
 きょうのバイト先は、その寮生活を共にした(部屋は違っていた)同級生がつい去年まで院長だった病院。

 彼の、波濤は高し・・・苦労はぼくとは桁違いである。
 だいぶ以前、研修医教育の講習会で偶然顏を合わせてから(ふたりとも同じ職位にあった)、時折、酒席をともにして来、数年前から誘われて彼の病院でバイトをさせてもらっている。

 彼は20年以上にわたって院長として地域医療に貢献し、都から災害拠点病院の指定を受けたり、大学からの研修医も毎年大勢受け入れ、病院大改築を行う、などなど多大な業績を上げてきた。
 その彼がいきなり職を解かれて院長補佐に。大学人事である。
 関連病院としての事業継続云々以前に、他の関連病院でお荷物になっている教授を送り込んできた。
 病院経営の経験は全くなく、棚ぼたで転がってきた権力の振るい方が滅茶苦茶だというのは、パートのぼくが傍で見ていても明らか。
 そこへもってきてコロナ禍だ。現場は大変である。

 連日伝えられる「医療崩壊」とは別次元での問題(裏事情)、これはたぶん他の多くの病院がそれぞれ様々な形で抱えているものだと推察する。だから余計に厄介なのだ。

 さて、この楽譜ノート、値段シールが貼ってある。1冊なんと72円である。

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2021/01/13

身近になったコロナ感染

 週2回バイトに行く病院の外来看護師さんが発熱しコロナ陽性、すでに発熱しているご主人からの感染らしい。濃厚接触者ということで外来スタッフが全員PCR検査実施したと。
 きょう午後、全員の陰性が確認された。

 ぼくの外来診療にいつも付き合ってくれる看護師さんとの会話。
「あなたがPCR陽性だったとしたらぼくも濃厚接触者になるんだろうか?」
「一応サージカルマスク、フェースシールドはしてますけど」
「15分以上続けて近距離にいることはないよ」
 ひとりの患者さんの診療時間は数分で、患者さんが入れ替わると彼女は検査説明や処方箋などの対応で診察室を出入りする。
「でも、累計では完全に15分を超えますね」

 陽性になった看護師さんは抗原検査でその場で結果が判明した。
 7歳、5歳、3歳の男児がおり、ご主人を含め病院へ検査を受けに来なければならないが、自家用車はない、公共移動手段は使えない、で、やむなく、本人が4人分の検体(唾液)採取用の容器を持って帰宅した、採取後、発熱の体を押して病院へ自転車で届けに来るという。
 地区によっては、あるいはタイミング次第では区で専門のタクシーを手配してくれることもあると聞いたが、あてにはできないのが現実のようだ。
 その保健所の指示は家族全員が自宅待機せよと。幸い今のところ軽症の部類に入るからこれでいいのかもしれないけど(ホテルは満杯だとか)、重症化したらどうするのだろう、子供たちはどうなるのだろう、よく知った人たちのことだから懸念される。
 そして我が身にも、ごく身近になって来たと感じる。

 国はようやく3月から無作為抽出の検査で国内の(無症状者の)感染状況確認を始めるという。
 いつこの話が出てくるのかと思っていたが漸く、だ。遅いけど、やらないといかんだろう。

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2021/01/08

検診要注意

 今日からオフィスタワービルにあるクリニックでの勤務開始。
 一般診療以外に検診も行っており、20人から多い時で40人くらい。
 昨年、非常事態宣言が出たあとは受診者が激減したが、今年はまだそれほどではない。
 多くは20代から50代のむろん無症状の人たちばかりである。コロナ感染者が混じっていてもおかしくないから、気を使う。

 遠隔読影の仕事を引き受けている他の検診専門施設もきのうから業務が始まり、肺がん検診のCT画像読影依頼が入り始めている。
 こちらはリモートなので感染の可能性はない。ぼくと北海道在住のドクターふたりでダブルチェックする。東京は大変です、とコメント欄に書き込むと、こちらは早朝から雪かきで参ってますと。

 毎年必ず数人の肺がんが見つかる。今年はコロナ感染者対応が優先とされ、状況も切迫しているから、がんであろうと緊急性のない患者の手術は先送りされる可能性が高い。
 要精検者をどのように専門病院へ紹介するか、クライアント施設は頭を悩ますかもしれないが、受診者(患者さん)はそれ以上に焦ることになる。

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 夕方ジョギングがてら、馴染みの店の前を通りかかったら(というより様子を見に行った)、自粛の張り紙。
 辺りの店も閑散としていた。小規模店は深刻だ。
 でも、この緩い緊急事態宣言でもって1か月でどれだけの実効性を発揮できるのか、実に心もとない。

 ロックダウン相当の措置がとられなければ、再燃するのは他の国々を見たって明らかだ、国民にお願いするだけでは追い付かない、地方行政で収まる問題でもない、政府の覚悟、決断が最重要、まともな議論に応じず閣議でとんでもない法解釈をやらかしてしまった与党がこれくらいのことできんでどうする、しかし、野党も対案が貧相で全然あてにならないし、と言っておそらく誰が舵取りをしたって困難だと思う、大切なのは民に寄り添う為政者の姿勢なのだが、・・・・・嗚呼、また溜息。

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